◾️1980年後半〜1990年前半バブル期が商業建築の原点

建築は長く権威の象徴であり、公共空間、住居空間が主たるテーマだった。
テーマパークやショッピングモール、ディスコなどの商業空間(遊びの空間)が1980年後半〜1990年前半のバブル期に広く大衆文化の中に「象徴的建築」として華々しくデビューしていった。

これまで看板建築と比喩され建築アカデミズムの中では取るにたらないものとされていた遊びの空間が、圧倒的なインパクトを持って人々の前に登場してきた時代。

マーケティングや事業計画に裏打ちされた建築デザインは、一見奇妙だが人目を引くアトラクティブな魅力で人々を誘惑する。
そして人々の遊びや消費行動を喚起し、購買行動や体験行動にスムーズに移行できるようになっている。

遊びの場、商業の場はそういった大衆心理を巧みに操り「楽しい」をインプリンティングし再来店を「意図的」に促進し、事業として成立させるのが最終目標である。

同時代、都市における遊びと商業施設の融合プロジェクトをいくつかやってきているので紹介したい。

大型ゲームセンター「sigma」町田バーディプロジェクト。
店頭においた数台の自動販売機でドリンクを買うとゲームが始まり勝つとファサードが音楽とともに動き出すというもの。
なにげない消費行動が大きな建築自体を遊びに変えてしまう、という極めて商業的な計画であった。

ゲームファンタジアバーディ店

また、同店渋谷センター街では同様に自動販売機でドリンクを購入するとその何%かが自動的にチャリティされ、ファサードに用意された動くゲーム機会がダイナミックに動き勝敗を決め、勝つと多めにチャリティされるという仕組み。
遊ぶ行為が無意識に誰かのために役立つという行為そのものを「CHARITY SHOW」という建築ファサードにデザインしてしまうプロジェクト。

また、博多のARLECCHINOというレストランでは、ひとつの演劇としてすべてを作り上げるという、シェークスピアいわく「人は役者、地球は舞台」を地でいくようなプロジェクトを実施した。

舞台演出家指導の下、演劇エチュードによる接客教育、舞台美術家による店舗づくり、音楽、照明、そして本場イタリアからピッツア職人招聘と、あたかもひとつの演劇として動き出したレストランという舞台は好評を博した。

イタリアンレストランアルレッキーノ博多店

また、渋谷センター街で2年間の期間限定で計画されたUCC STARPORT2045は舞台セットでオスカーを受賞したデザイナーとともに建築そのものを作り、
ジョージ・ルーカスの新作を上映するシミュレーションマシンアトラクションを導入し、日本初登場の大型シュラスコ料理店を組み合わせたミニテーマパークを登場させた。
ディズニーランドではお酒は飲めないが、大人のテーマパークは思う存分楽しむことができた。
まさにキラキラした都市の遊びを具現化したプロジェクトだった。
とはいえ、この時代の遊びと商業施設の関係はまだまだアナログ的要素が強かったと思う。

UCC STARPORT 2045

■ リアルバーチャルな今と建築の関係

時は流れAmazonに代表されるE-コマースが商業の中心となりつつあり、以前のようにショッピングモールや商業店舗でモノを買うことが少なくなっている。

アメリカではデッドモールといわれ廃業するモールが後をたたないようである。

そうした動きにともない、 ナイキなどの世界的なメーカーではすでにリアル店舗の改革がスタートしている。つまりリアル店舗でしか体験できないモノコトを重要視した建築インテリアデザインや装置、しかもリアル店舗からリアルタイムにE-コマースやSNSへコネクトし、リアルバーチャル体験ができるようになるのが今後の主流である。

つい最近オープンしたユニクロ表参道店などは店内に200台ものモニターが並び、ユニクロファンがコーデしたファッションを自由にSNSにアップし、店内でそれを見ながら服を選べる仕組みを備えている。

中国のアリババグループが経営するスーパーマーケット「フーマーフレッシュ」などは主力はもちろんE-コマースだが店舗は水族館のような生簀で新鮮な魚介類をショーアップして見せ、フレッシュな臨場感を来店者に刷り込み、通販で購入する際の大きな要因になるよう仕掛けをしている。

これからは店舗開発の流れに必ずビッグデータが絡み、より高度な、よりユニークな、リアル店舗での買い物体験が用意されるはずである。建築はこの流れの中でどのように考えていかなくてはならないのだろうか?

esports hotel e-ZONe ~電脳空間~

■ esportsやVRワールドがもたらす新しい今

デジタル世界の遊びが賞金総額30億円もの大会を動かすムーブメントが起きている。

デジタル世界での対戦ゲームが何万人もの観客の前でショーのように繰り広げられるリアルな熱狂、そしてそれを配信してまた増幅するデジタルの熱狂。
今世界の遊びが変わろうとしている。新しく登場してきた遊びの概念「esports」

それはゲーミングコンテンツを媒介にファンがファンを呼ぶ新しい遊びの領域。

行列ができる、満員で入れない、など流行している様が体感できるリアル世界とは違いデジタルという見えない世界でのムーブメントはクールに進行している。

そして近い将来、リアル世界でも爆発的にその遊びの様子が伝えられることになると思われる。わたしたちが手掛けたesports HOTELプロジェクトはいちはやくそのムーブメントを捉え、リアルな世界での商業施設の可能性を探っている。異日常をイメージさせるデザインはリアルとデジタルの領域をあいまいに行き来させプレイヤーの感性を刺激し、リアルな世界でもデジタルに没入できる醒めないデザインを試みている。

ミレニアム世代を中心に広がりつつある社会変化。
「デジタルネイティヴ世代」はコミュニケーションの取り方や価値観がこれまでの世代と大きく異なるといわれる。

このような消費性向をもった人々が消費のメインストリームになれば建築もデザインも大きく変わっていくことが容易に想像できよう。

これからの遊びと建築の将来に大きな変化を与えることは間違いない。

esports hotel e-ZONe ~電脳空間~

■ 建築はもはや「家電」になって いく

住宅もIOTばやりである。
多くの家電メーカーがその仕組みを作っている。
その仕組みをどのようにビルトインもしくははじめから設計計画に組み込むことを多くの建築家は理解していない。

これからの建築はまったく新しい概念で創造されていくに違いない。

張り巡らされたセンサー、床壁天井がモニターで構成され、多くの人々へ情報を伝えながらも、その中のたった1人を狙った情報発信ができるのだ。

商業施設では多くの来店者の概念をセンサーが読み取り多くの来店者が望むモノを瞬時に目の前に提案する、ことなどはおそらくすぐにできるようになるだろう。

「建築」「スマホ(2 、3年後には別のモノに変わっているかもしれないが)」「SNS」が一体となった今まで見たこともないような「建築」が誕生する。

建築家は抜本的に「建築」という概念を破壊していかなくてはならなくなるだろう。

たとえば「家電」という概念で建築を捉え直し新しい時代の新しいスキルを新しく獲得しなければならない。
つまり私たち建築に携わる者は、いままでの既成概念を捨て新しい時代のスキルを磨かなければならない、ということになるだろう。

これからはより内面的、本質的な面がクローズアップされ、家電を超える利便性と機能性とを兼ね備えた、建築の「デジタルトランスフォーメーション=DX」が進化を遂げていくに違いない。

しかも2020年新型コロナウイルスという感染が世界を大きく変えている、今。人々の暮らしが変化しデジタルを活用した「新しい生活様式」にまさに移行している、その流れはあっという間に加速し瞬く間に私たちを未来のリアルバーチャルの建築へと誘うだろう。 今が、来るべき未来の、まさにその予兆を見ているようだと感じている。

このコラムは「遊びと建築とデザイン」について私の所感をただただ羅列するコーナーです。
あくまで個人の感想として述べていますが理解不足による誤り、誤解などあるかもしれません。
お気づきになられた方はご指摘ご指導いただけますと幸いです。

次回のテーマは「飲食店というの遊び場」についてです。
コロナでダメージを受けている飲食店も多いかと思いますが、かつて飲食店は街角のテーマパークだったという記憶を掘り下げてまいります